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タワーマンション大規模修繕工事の特徴と課題

大規模修繕・WORKS 2021年6月2日

中低層と超高層の違いが大規模修繕に及ぼす影響

中低層の建物と超高層の建物では新築時の工法が大きく異なり、それに伴って外部に設置される仮設足場も異なります。中低層マンションでは在来の枠組足場を用いて躯体工事、外装仕上げ工事を行うのに対し、タワーマンションでは構造部材を事前に製作するPC(プレキャスト)工法の採用により、基本的に無足場で施工されます。その結果、中低層マンションでは新築時と同様の足場を設置して大規模修繕工事を行うことが可能ですが、大型クレーンを使用し無足場工法で建設されたタワーマンションでは、全く新規に仮設計画を立てる必要があります。

タワーマンションの大規模修繕における仮設計画

タワーマンションの大規模修繕工事で用いられる代表的な仮設足場はゴンドラ足場、移動昇降式足場ですが、状況によっては設置高さが60m程度までの鋼製枠組足場も使用されます。タワーマンションではアーケードや人工地盤など足場の設置が極めて難しい構造物が存在し、特に最下部の数フロアに商業施設や公共施設などを持つ複合型タワーマンションでは、居住者だけでなく施設利用者の動線確保や利便性にも配慮して、その条件を満たす仮設足場を選択することになります。また建物の形状によっても足場設置の制約が発生します。

建物形状やプランニングによる仮設足場計画の違い

同社が大規模修繕工事を行ったエルザタワー55、エルザタワー32では、移動昇降式足場、ゴンドラ足場、鋼製枠組足場を複合的に使用しました。どちらも地上100mを超えるため、主要な仮設足場として移動昇降式足場とゴンドラ足場が選択肢に上がりました。ゴンドラが最上部から吊り下げる構造であるのに対し、移動昇降式足場は地上またはそれに準ずる床上から昇降マストと呼ばれるレールによって機械的に上昇させる構造になっています。ゴンドラ足場ではエルザタワー55のオーバーハング下部に入り込めませんが、移動昇降式足場はオーバーハング下部での工事も可能です。安定性、作業架台の広さ、風による影響の少なさ等を考えると、タワーマンションの大規模修繕工事に非常に適した仮設設備と考えられる移動昇降式足場ですが、レール下部に6〜11t程度の荷重が掛かるため、それを支持できるかが設置の条件となります。エルザタワー55ではこの条件をクリアしましたが、エルザタワー32では建物西側の一部に人工地盤があること等により、その部分については移動昇降式足場をあきらめ、ゴンドラ足場を設置しました。

タワーマンション大規模修繕工事における課題

タワーマンションの大規模修繕で使用される移動昇降式足場では昇降マスト、ゴンドラ足場では揺れ止めレールを建物本体に後施工アンカーで固定する必要があります。マストやレールの固定には、打設後ただちに強度を発生する金属拡張系アンカーが使われます。これはコンクリートを電動ドリルで削孔し専用の金属を打ち込む際の拡張力で固定される構造ですが、コンクリートの高強度化により、削孔が難しい場合があり、状況によっては建物との固定が不要な連結式ゴンドラ形式の足場しか選択できない可能性も出てきてしまいます。

また昨今のタワーマンションでは、最上部にティアラあるいはクラウンと呼ばれる冠壁が設けられています。この冠壁外周側も大規模修繕の対象ですが、地上100mを超える高所で仕上げ工事を行うための仮設足場計画が欠かせません。移動昇降式足場は地上からマストを積み上げてゆくので冠壁上部までの工事にも対応できますが、ゴンドラ足場では基本的に屋上からの吊り下げとなるため冠壁の仕上げについては別途検討が必要です。

さらに免震構造のタワーマンションなどでは、大規模修繕工事中の地震発生も検討課題です。

以上の各課題は、大規模修繕時に初めて顕在化してきますが、新築時の設計段階から将来の大規模修繕を踏まえて計画することで解決できることがほとんどです。例えば後施工アンカーについては事前にアンカーを埋め込んでおく、冠壁については最外面から多少セットバックさせる、免震構造については外周犬走の片持ちスラブに強度を持たせるなど検討の余地は充分にあります。

このように事前対応しておくことで、大規模修繕工事がより簡易に進み、総コストの抑制にも寄与できるのです。

営業部  担当者:苑川、大城
TEL:03-6228-7836 FAX:03-6228-7848