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大規模修繕を成功させるには、“居住者の要望を明確にすること”が大事

大規模修繕・WORKS 2021年3月25日

タワーマンションの大規模修繕はどのように行われる?

1997年に建築に関する規制が緩和され、2000年代に入ってから40階以上で高さ120メートルを超える“タワーマンション”が急増しました。それから10年以上が経過し、多くのタワーマンションが大規模修繕の時期を迎えようとしています。そこで、タワーマンションの大規模修繕がどのように行われるのか、大規模修繕を成功させるために大切なことはなにか等々、すでに大規模修繕を終えた55階建ての「エルザタワー55」を例にとってご紹介します。

タワーマンションは外壁を補修するための足場が特殊

大規模修繕の工事項目は、タワーマンションと一般のマンションで実はそれほど違いません。大きく異なるのは、外壁を補修するための足場です。一般のマンションの工事で使用される足場(仮設)は、一定の高さまでしか使えません。また、高層階は風が強いため、上からつり下げる形のゴンドラだと大きく揺れて建物にダメージを与える可能性があります。エルザタワー55では、1階から7階までは一般的な足場を用い、8階より上は地上から建物に沿ってマストと呼ばれる鉄製のレールを取り付けて、幅の広い足場を移動させる“移動昇降式足場”を使いました。

タワーマンションは大規模修繕の工期が長い

一般的な足場であれば、複数階を一度に作業することが可能ですが、移動昇降式足場の場合は、1フロアずつ作業していきます。足場が動くスピードが遅いことや、強風で作業できない日があることなどから、外壁の修繕には一般のマンションよりも多くの日数が必要になります。工事に入る前には移動昇降式足場が設置できるかなどの調査にも時間がかかります。大規模修繕の工期は一般的なマンションでは6〜7ヶ月程度ですが、エルザタワー55は完了までに約2年かかりました。

タワーマンションは大規模修繕の費用もかかる

特殊な足場を用いると、そのリース料やレールの設置にも費用がかかります。またタワーマンションの外壁は風圧などに耐えられるよう特殊な素材を使っていることが多く、その補修費用も高額になります。つまりタワーマンションの大規模修繕は工期が長くなるだけでなく、費用もかかるというわけです。さらに総戸数650戸の大規模タワーマンション「エルザタワー55」では、大規模修繕についての650世帯の意見をまとめることに多くの時間を必要としました。居住者数の多いタワーマンションが大規模修繕の時期を迎えたときは、一般のマンションよりも早めに、管理組合でしっかりと居住者の合意形成をしておくとよいでしょう。

技術力の高い施工会社を選ぶことも大切

一口にタワーマンションといっても、敷地の状況や建物の形(凹凸があるかどうかなど)は様々なので、どのような足場や修繕方法が最適かは、当然のことながらマンションごとに異なります。ただ、ひとつ言えることは、タワーマンションの大規模修繕では移動昇降式足場のように特殊な装置も必要となるため、技術力の高い施工会社を選ぶことが大切です。

居住者の要望を明確にすることが大事

「エルザタワー55」では、複数の会社に大規模修繕の施工計画と見積もりを出してもらったところ、内容が各社ばらばらで比較できず、いったん白紙に戻したそうです。そして、まず居住者側の要望をまとめてから、改めて技術コンペを含む入札を実施しました。「エルザタワー55」の大規模修繕を受注した株式会社シミズ・ビルライフケアのリニューアル事業部門技術部部長の原章博さんは「大規模修繕は居住者のニーズをはっきりさせたうえで、施工会社にいろいろな案を出させて比較検討することが大切」と話します。原さんによると、1回目の大規模修繕は管理会社や施工会社主導になりがちで、そのため「1回目の大規模修繕で失敗したから2回目はしっかりやりたい」というマンションも多いと言います。このような事態を避け、1回目の大規模修繕から成功させるには、何よりもまず居住者全員が“自分たちの資産を守る”という意識を持ち、大規模修繕に積極的にかかわっていくことが重要です。

営業部  担当者:苑川、大城
TEL:03-6228-7836